仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「お帰りなさい」

呆然としていた美琴は、千夜子の声にハッとして我に返った。
と、同時に強い怒りが込み上げてくる。

震えそうになる手を握り締めて、千夜子を見つめ問いかけた。

「何しているの?」

「何って、見ての通り、休んでいたのだけど」

ふざけた態度で言われ、美琴は顔をしかめた。

部屋に入った時は気付かなかったけれど、美琴のベッドに千夜子のものと思われる、ジャケットが投げ捨ててあった。

千夜子はシルクのシャツを着ていたけれど、その胸元は大きく開き、胸の谷間がのぞいている。
どう見ても、ただ休んでいたようには見えなかった。

いや、そもそもなぜこの時間に彼女が一希のベッドにいるのか……。

「あなた、仕事中ではないの?」

「ええ、そうですけど社長命令ですから」

「社長命令?」

「そう。俺のベッドで休んでいろって」

美琴は目を見開いた。

(まさか、そんな……一希がそんな事を言う? いくら私を嫌っているからって言っても)

一希と千夜子は付き合っているのだから、当然体の関係があると分かっていた。
しかし、それを美琴に見せつける意味があるとは思えない。

一希と千夜子が何を考えているのか分からない。

それだけに対応に迷っていると、千夜子が気怠げに身体を起こした。

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