仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
「ところで、神楽さんはどこにいるんだ？」

「それが、見失ってしまって。彼を探してここに来たのよ」

「そうなのか？ じゃあ俺が邪魔したってことだな」

「いいよ。こんなところで昔の友達に会うなんて驚いたけど、嬉しかったし」

美琴がそう言えば、慧も屈託無く笑う。

「そうだな。俺も見かけた時驚いたよ、まさか？って」

「私のことはすぐに分かったの？」

「ああ、美琴変わってないし。だから人妻だなんて未だに信じられない」

「そうかな？」

少し複雑な気持ちになった。
十年ぶりに会ったのに、少しも変わってないのは、問題がある気がする。

人妻らしくないのは、ちゃんとした結婚生活を送っていないからかもしれないけど。

「美琴はいつ久我山家に行ったんだ？ 中学卒業したとき？」

「違うよ。成人してからだけど、どうして？」

「あー、ほらお前、あの頃親の再婚で悩んでただろ？ 嫌だって言ってたし、それでお祖父さんのところに行ったのかなって」

「私、そんな話したんだっけ？」
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