仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
「秘書を同行しているわけではない。彼女は今夜は招待客としてここにいる」

一希は千夜子を庇うように言う。

「でも実際その人は秘書でしょう？ それに仕事の話をしていたと神楽さん自身が言っていたじゃないですか。それとも今からはプライベートな話をするんですか？」

慧の口調は明るく軽いけれど、明らかに嫌味が篭っていた。

一希にこんな態度を取ってしまって大丈夫なのかと心配になる。

神楽グループの地位権力は強く、大抵の人は彼にとても気を遣うのに。

「慧……」

止めようと、彼の腕を引く。
すると、その様子を見ていた千夜子が口を挟んで来た。

「随分と仲がいいのですね」

ハッとして千夜子を見れば、彼女は美琴に対するものとは全く違う、感じの良い笑顔を慧に向けていた。

今の台詞も慧に向けて言ったようだ。


「……同級生ですからね」

慧はかなり素っ気ない。
昔は誰にでも友好的だった彼の態度とは思えずに、美琴は戸惑う。

千夜子は気にした様子もなく微笑んだ。
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