仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
一希はひとりで迎えに来た。

千夜子を伴っていたらと警戒していたが、彼女の姿は見当たらなかった。
ホッとしながら、一希に連れられ数人に挨拶をしてから、柿ノ木家を出て迎えの車に乗り込んだ。


帰りも無言の車内だろうと外の景色を眺めていると、一希が話しかけて来た。

「葉月慧とは、どんな関係なんだ?」

少し驚きながら、視線を景色から一希へと移す。

彼は、美琴の方をしっかりと見つめていた。

「さっき聞いてなかったの? 中学校のときの同級生だけど」

一希は何か探るように、スッと目を細くする。

「それだけか?」

「……どういう意味?」

「十年ぶりの再会とは思えないほど、親しそうに見えた。卒業後も会っていたんじゃないか?」

いつもだけれど、一希の口調は冷ややかで、美琴への敵意を感じるものだった。

違うのは美琴を無視するのではなく、自分から関わって来ようとしているところ。

(慧のことを気にしている?)
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