仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「会ってないけど。どうして彼を気にするの?」

美琴の言葉に一希は僅かに顔をしかめる。

「自分の妻の交友関係を確認するのは当然だ」

「妻って……」

予想もしなかった一希の発言に驚愕した。

(今更、何を言ってるの? 妻扱いをして来なかったのは一希の方なのに)

初夜に放置され、その翌日には愛人を家まで迎えに来させた。

普通では考えられない屈辱を与えられたのだ。

それ以降も歩み寄ろうとする美琴を拒絶し続けたのは一希の方。

それでも耐えて来たのに、千夜子を家にまで……それもベッドにまで連れ込んでいたのだ。

(私を妻だなんて思っていないくせに)

おそらく、慧のことが気に入らないだけなのだ。

都合が良いときだけ、夫の権利を主張するずるさに怒りがこみ上げる。

(私の妻としての権利なんて、何も認めなかったくせに)

感情的に責める言葉を投げつけたい気持ちを理性で抑え、美琴は一希を冷ややかに見据えた。

「私の交友関係に口出しするのはやめてくれる?」

「なんだと?」

一希が眉をひそめ、車内は、険悪な空気で満たされていく。
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