仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「……馬鹿な勘違いはするな。千夜子は愛人なんかじゃない」

あまりの往生際の悪さに、美琴は息を呑んだ。

(どうして認めないの? 行動は隠しもしないのに)

言葉で認めたところで、変わりないではないか。

「あなたと彼女の共通の友達から聞いたのよ。ふたりは恋愛関係にあるって。一希は私と結婚しているのだから、観原千夜子は愛人になるじゃない」

「友人? 誰だ!」

「あなた達の学生時代の友人だって言ってたけど。昔から公認の仲で、そこに私が割り込んで来たって責められたわ。でもおしゃべりな友人に怒るより早く認めたらどうなの?」

口を閉ざし彼の返事を待つ。

不倫を認めたあとどうするか決めていない。それでもはっきりしたい気持ちが大きかった。

「……千夜子は愛人じゃない」

一希の返事に美琴は失望して項垂れた。

(正直に話す誠実さもないんだわ)

虚しさに苛まれながら美琴は一希に冷ややかな声で告げる。
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