仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～

「それをあっさり信じたんだ。前から思っていたけど本当に彼女のいいなりね。自分の頭で少しも考えないの？」

「千夜子が嘘を吐いたと言うのか？」

「そう。完全な嘘よ。私が彼女と会ったのは離れの寝室。しかも乱れた格好で一希のベッドに横たわっていたわ」

一希が目を見開く。

「有り得ない。千夜子を侮辱するな！」

「侮辱されるような真似をするから悪いんじゃないの？　一希が私の言葉を信じないのは分かったわ。でも私も一希の話を一切信じない。あの日一希と観原千夜子は仕事中に家で不貞行為をしていたのよ。私の帰りが遅いのを知っていたからね」

「違う！　いい加減にしろ」

怒りを露わにする一希に、もう愛情は感じない。あんなに好きだったのに、悲しい程気持ちが冷めてしまっていた。

「私は自分が見たことを信じるから。一希が観原千夜子との関係を否定するのは自由だけど、客観的に見ても二人は愛人関係だわ。だって今夜のパーティーだって、一希が手を回して彼女を招待客にしたのでしょう？　私が文句を言えない状態にして一緒に出席する為にね」

「違う！」

「どうして必死に否定するの？　結婚してからのあなたは、私に対して驚くくらい冷たかった。それは観原千夜子の存在があるからでしょう？」

「違うと言っているだろう？」