仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
気まずいまま自宅に帰り着くと、美琴は直ぐに玄関脇の自分の部屋に入り鍵をかけた。

一人になると、ホッとする。

久我山の祖父の名前を出すと一希は黙るが、視線が険しくなるのも分かっていた。

かなりの怒りを感じているのを、理性で堪えているように見える。

(どうしてお祖父さんに気を遣うの？)

慧の話では、神楽家が久我山家を立てる必要は無さそうだった。

だとすると、祖父と一希、または義父との間には個人的に何かあるのだろうか。

考え込んでいると、スマホから着信を告げる音がした。

確認すると、慧からメッセージが届いていた。

『久しぶりに会えて良かったよ。何か有ったら協力するから気軽に連絡しろよ』

短い文だけれど、気遣いを感じる。

「ありがとう。私は会えて嬉しかった。またゆっくり話したいね」

直ぐにメッセージを作って返信した。

一希との言い合いで荒んだ気持ちが、少しだけ和らいだ。
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