残念な王子とお節介な姫
「お前、もし、部長が落ち込んでたら、
同じ事をしてやるか?」

春山が言った。

「………しないな。」

「だろ?
百歩譲って、俺や吉田が離婚して一人暮らしを
始めたら、毎晩、飯を食いに行ったり、
毎週末、遊びに行ったりするか?」

「………しない。」

「じゃあ、6年前、付き合う前の伊藤が、
失恋したって落ち込んでたら、毎晩、毎週、
食事やデートに誘わないか?」

「………誘う。」

「そういう事だよ。」

俺は、今まで、何も考えずに姫に甘えていた事に、愕然となった。

「俺、もしかして、酷いことしてたのか?」

「それは、姫ちゃんも分かっててしてた事だろ。
あんまり気にするな。
それより、これからどうするか、
考えてやれよ。」

春山が笑って酒を呷る。
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