残念な王子とお節介な姫
「奈々さんも抱いてみる?」
「ええんですか?」
「もちろん。
実のお父さんの奥さんは、
義理のお母さんでしょ?」
「うち、お母さんですか?」
驚いた顔をした奈々は、すぐに嬉しそうに笑った。
お姉さんは、ミルクを飲み終えた絆を縦抱きにして奈々に渡し、背中をトントンする。
「もう、ほとんどゲップは出ないんだけど、
一応、念のためね。」
絆、大切に育てられてるんだな。
机の角も家具も緩衝材が付けられてる。
キッチンには柵が付けられ、絆の手が届くところには、物が全然ない。
「絆を大切にしてくださってるんですね。
ありがとうございます。」
「こちらこそ。
こんなかわいい子を育てさせてもらえて
嬉しいわ。
いつか、独り立ちして、私たちのもとを
巣立って行く時が来るとしても、
このかけがえのない時間を過ごせるのは、
海翔くんが絆を私たちに任せてくれたから
だわ。
本当にありがとう。」