残念な王子とお節介な姫
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翌 6月30日(日)

寝具類を片付け、引っ越し業者を待つ。

8時。

時間通りに業者が来て、あっという間に荷物を積み込んでしまった。

俺は結の荷物を持ち、2人で駅へ向かう。

俺は空いた手で、結の手を取ろうとするが、やっぱり、さり気なく、かわされてしまった。

結、そんなに俺に触られるのが嫌なのか?

結は、そいつに抱かれたんだろうか?

考えたくもないのに、ドロドロ、モヤモヤと醜い感情が俺の頭の中で渦巻いて、嫌な妄想を掻き立てる。

俺は、逃げ場のない新幹線で、結の手を握る。

結は手を振りほどきはしないが、すぐに寝たふりをした。

本当に寝てるのかもしれない。

だけど、眠いから寝てるんじゃない。

俺と関わりたくないから、寝ようとしてるんだ。

俺は、なんでこんなに結の事が分かってしまうんだろう。

なのに、どうして、こうなる前に気づいてやれなかったんだろう。

後悔先に立たず。

3ヶ月前の俺に教えてやりたい。




3時間後、俺のマンションに着いて、結は言った。

「この部屋、広くない?」

「そりゃ、結と一緒に住むつもりで探した
から。」

「え?」

「大阪支店をなんとか立て直して、結を迎えに
行くつもりだったから、初めから2人で住める
部屋を探したんだ。」

結が、驚いた顔をする。

「なんで最初からそう言ってくれなかったの?」

「そんなの、いつになるか分からないのに、
約束できないだろ?」

だけど、言っておけば良かった。

3ヶ月前、「迎えに来るから、待ってろ」って言ってたら、状況は変わってたんだろうか。
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