愛のない部屋

熱いお湯につかり、一息ついた。
温泉、好きだな。


「ごめんなさい」



温泉という場所に相応しくない舞さんの謝罪に、首を傾げる。


「私が修吾に無理を言ったんです」



修吾、聞き慣れないタキの名前……。



「なにをですか?」


「本当は2部屋借りて、男女別の部屋割りだったんです。でも私がワガママを言いました」


「いいよ?気にしないで下さい」



恋人同士が同じ部屋で寝るのは、あたりまえのこと。

謝るようなことじゃない。
そもそも2人の旅行を邪魔している私たちが悪い。



「峰岸さんと気まずい雰囲気になりましたか?」



「……気まずい、というか。アイツは私が嫌いだから、冷たいのはいつものことです」



冷たいのに、
たまに優しいから、調子が狂うんだよね。


「私にはその反対にしか、見えません」


「反対?」


「峰岸さんは沙奈ちゃんのことが好きなんじゃないですか?」


「はぁ?」



証拠もないのに随分、的外れのことを言ったもんだ。
気を遣わせてる?

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