愛のない部屋
「峰岸にはマリコさんがいるから」
舞さんだって、その名前をさっき聞いたでしょう?
「峰岸にとってマリコさんは、忘れることのできない大切な存在みたい」
――忘れたくても、忘れられねぇんだよ。
昼間の峰岸の苦しそうな声が蘇る。
「マリコさんと峰岸さんのこと疑っていますか?」
どうして舞さんは私と2人きりになると敬語をつかうのだろう。
「疑ってる?う~ん、私には関係のないことかな」
2人がどんな関係であるかなんて気にするような問題じゃないし。
「沙奈ちゃんはマリコさんがいなかったら……峰岸さんと付き合いたいと思いますか?」
率直な質問だ。
それでも迷わず返答。
「思わないよ」
「本当ですか?」
そんな探りをいれるような目で見なくても。
「夕方、沙奈ちゃんが眠っている間に、タキさんが言ったんです。沙奈と同じ部屋な、って」
「アイツ嫌がってたでしょう?」
その光景を容易に想像できてしまった。
峰岸の眉間のシワがより一層、深く刻まれたことだろう。