愛のない部屋

話し込んでしまったせいか舞さんの顔がほんのり赤い。

脱衣場に行き、着替えながらも峰岸のことを考える。


もしマリコさんと峰岸があまり良い関係でないとしたら。

手紙を渡した翌日、朝早くから出掛けた峰岸は本当にマリコさんに、逢いに行ったのだろうか?


逢っていたとしたら、悪い話をした?


疲れた顔をして帰ってきて突然キスをしたアイツに私はなんて言ったっけ?



ーー楽しい1日だったでしょう?

なんて皮肉を言ってしまった覚えがある。


言わなきゃ良かった……。



「沙奈さん。珈琲牛乳が売っています。飲みませんか?」


「はい、……あの、どうして敬語なんですか?」


舞さんは売店に向かう足を止めた。年上なのだから敬語をつかう必要はないのに。


「これが素です」


「え?」


「無理に明るくしたり、わざと砕けた口調にしてます」


「……」


「修吾の隣りにいても不自然でない、つりあう女になりたいんです」


「そっか」



彼女もまた、好きな人のために背伸びをしているのか。今のままでも十分魅力的なのにね。

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