愛のない部屋

「舞さんは舞さんらしく、タキの傍にいれば幸せになれるよ」


偉そうなことを言ったけれど、これは峰岸の言葉だっけ。




――おまえは、おまえらしく。



私に峰岸は言ってくれた。




「ありがとうございます」

律儀に頭を下げた舞さんの背中を、少しでもおすことができたらいい。



舞さんのために、

峰岸のために、

私はなにができるのだろう?







中庭で涼んで行くという舞さんを残して、ひとり部屋に戻る。



「ねぇ、」



かけられた言葉に振り向けば、いかにもガラの悪い金髪の若者。


「ちょっと相手してよ」


「忙しいので」



ニタニタと気持ちの悪い男。チャラチャラとつけられた無数のアクセサリーにも抵抗を感じた。



「すぐだからさ?ちょっと布団の上で舞ってくれればねっ」



遠回しな言い方だが下品以外の何物でもない。気持ち悪い。



「無理です」



生理的に受け付けない。



「良いじゃん、良いじゃん」



おまけにしつこい。

うんざりしていたけれど、すぐにほっとした。




前方から峰岸が歩いてきたから――。

< 133 / 430 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop