愛のない部屋
そのまんまの意味だよ、峰岸。
「恋は儚くて、脆いもの」
だからこそ美しい、と誰かが言っていた。
「そんなの分からないだろうが」
表情は見えないが、眉間にシワをよせているだろうな。
「永遠に続く恋もあるよ。結婚がそのカタチだろう?」
「離婚だって別居だって今の世の中、珍しくないよ」
「全員がそうとは限らないだろう?じいさん、ばあさんになっても、互いを大切にし合う夫婦はいる」
この世界で何人が、
結婚して良かった
と、心から思えるのだろう。
現実と向き合った時、誰もが夢見る少女ではいられない。永遠の愛を信じていた私だって、痛い経験をして身に染みた。
恋なんて一時の、想いだと。
「そこまでおまえが言うのには、なんか理由があるんだろう?俺も後味の悪い恋をしたから、気持ちはよく分かる」
それはマリコさんとのお付き合いのことを、指すのだろうか。
峰岸がただひとり付き合った、特別な女性。
「でも俺は、」
少し間が空く。
「もう一度、恋愛をすると決めたんだ」
「だからなに?」
そんな話、もう聞きたくない。