愛のない部屋
「俺たち、付き合ってみようか?」
付き合って下さい、なんて誠実な言葉を口にしないのもまた峰岸らしい。
「私はね、恋はしないの」
その決意を覆すことはできない。
ぎゅ、っと
峰岸が更に強く私を抱き、
鼻と鼻が触れ合う。
「ずっと一緒にいる、って約束したじゃん」
至近距離で吐息がかかる。
くすぐったい。
「約束通り、傍にいるよ。でも恋人にはなれない」
似た者同士が惹かれ合って、恋だと錯覚しているだけだと以前も思ったが、
これではっきりした。
峰岸はひとりになりたくないから、私を追う。
私もひとりで生きられると分かってはいるけれど、悲しい時に誰かに傍にいて欲しいと、峰岸に甘えている。
裏切らずにずっと近くにいてくれさえすれば、
私でなくても良いのだ。
たまたま近くにいて条件の合う私が選出されただけで、ーーこれは恋ではない。
それを告げたところで頑固な峰岸が認めるわけない。だから彼が間違いに気付くまで、一緒にいてあげよう。
「寂しい夜、ひとりで眠れない時に、隣りで寝てあげてもいいわよ。でもそれ以上は駄目」