愛のない部屋
「なんなら今ここで、キスしても良いしな」
「馬鹿じゃないの!」
「馬鹿はおまえだろう」
好きな相手を馬鹿扱いするなんて最低だよ。
「マリコとは何もないから」
元カノと連絡を取り合っている時点で、"何もない"ことなんてありえない。
「ねぇ、峰岸。もしアンタが本気で私を好きなら誠意を見せてよ」
「どうやって?」
「もう二度とマリコさんと会わないで。もちろん電話もね」
「……」
嫌われるのを承知で、嫌な女になろう。
私の性格の悪さを知っていても、まだ好きだと言ってくれるのならば。
もっともっと峰岸の困ることをして、うんざりさせてやろう。
そして、こんな私を嫌いになって欲しい。
私と峰岸は一緒に歩めない。
「マリコと会わないと言うのは……それは無理だ」
「……」
本命はマリコさん。
あっさりマリコさんの勝利。
敗北者の私はどんな顔をすれば良いのかな?
「……ごめん」
謝るくらいなら、好きだなんて言わないで欲しかった。
愛という目に映らぬ魔物のせいで、今まで通りの私たちでいられないことがなによりも寂しい。