愛のない部屋

携帯電話を握りしめ、邪魔にならない隅で立ち尽くす。


「うちで待ってろよ」



目の前に影ができたと思い、顔を上げればほど別れたばかりの峰岸。


「篠崎には理由を説明すれば大丈夫だろ?隠すこともやましいことも無いんだから」


峰岸の額には汗。
平然を装ってはいるが息も僅かだが乱れている。
私のために走って来てくれたのだろうか。


「うちに戻ろう」


「此処にいる」


またあのリビングに戻ることで、私がどれだけ傷つくのか峰岸は分かっているのだろうか。追い出された人間が再びのこのことお邪魔できるほど私の精神力は強くない。


「おまえホントに馬鹿だな」


心底、あきれたように言う。



「篠崎もこんな彼女をもって手がかかるな」


「……」


手がかかる女だから、峰岸は私を手放したの?



「せいぜい篠崎にアイソつかされないように気を付けろよ」


愛想?

私に愛想を尽かしたのはアンタが言うなんて。
皮肉なアドバイス。


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