愛のない部屋

もう、どうでもいい。
峰岸に見捨てられた時点で、傷口は開いた。

更に篠崎に愛想をつかされたとしても、傷口は大して広がらないだろう。


「峰岸もマリコさんに捨てられないように、気を付けなさいよ」


売り言葉に買い言葉。
ホントに嫌な女。


峰岸と出逢い、ますます自分が嫌いになったなんて。こんなにも自分の性格が悪いのだと自覚して、それでもなお峰岸を追い求めているウザイ女。



「マリコはさ、俺から離れないよ」



大真面目で言い切る。



「アイツには俺が必要だから」



感じとれた自信。

この男も、マリコさんとの永遠の愛を信じ始めたのかもしれない。


「馬鹿みたい」

「あ?」



峰岸は私のことなんて、もうなんとも思っていないのに引きずっているのは私だけなんて――馬鹿みたい。


「もう恋をしない、なんて言ってた奴と同一人物だとは思えない。峰岸は変わったね」



頭に釘を打たれているような、鈍い痛みが走る。



「人のことを言えるのかよ?おまえだって篠崎と恋をしているじゃないか」


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