愛のない部屋
篠崎としているのは恋ではないと、叫んでみようか。
なにか理由があって峰岸は私を突き放したのだと思っていた。だから私も彼の演技に付き合おうと決めたのに、どうやら峰岸は本気でマリコさんを愛しているらしい。
"マリコはさ、俺から離れないよ"
この言葉には自信と確信の音色が見え、
嘘を言っているようには見えなかった。
それなら私も、真実を言えばいいじゃないか。
「私、篠崎さんと……」
全てを白状しよう。
篠崎よりアンタが好きだと、本心をさらけ出してしまえば良いと思った。
「篠崎さんと……」
ちゃんと思いをぶつけようと思ったのに
そこまでしか言えなかった。
篠崎が運転する車が視界に入り、口を閉ざす。
「篠崎がどうしたって?」
「なんでもない」
「……なんでもない?隠すなよ」
峰岸の鋭い疑いの眼差しから逃れるように、車の方に視線をやる。
そんな私に気付いたのか数回、クラクションが鳴った。その音に峰岸も振り返り、篠崎が迎えに来たことを知ると、私から距離をとった。