愛のない部屋
暗闇で笑っているライオンのぬいぐるみは冷たい。ライオンを抱き締めながら、無意識に携帯を操作して。
峰岸に電話を掛けた。
もう耐えられなかった。
迷惑だと切られても、声が聞けたならそれで良い。
だから出て……!
『どうした』
何コールかすると峰岸が出た。
予想外の早さに驚きながらも、渇いた喉をつかう。
「寝てたよね」
『まぁ…なんかあった?』
切られるどころか話を聞いてくれるよう。
「傍にいて欲しいの」
『は?』
「今すぐ私のとこに来てよ」
自分でもなにを言っているのか、分からなかった。でも偽りのない本心。
「峰岸……会いたいよ」
『何を言うんだよ……』
焦ったような声が響いた。
そうだよね、非常識だよね。
「ごめん。忘れて。おやすみ」
「ちょ……」
早口で言い切り、終話ボタンを押した。
また弱さが出ないように携帯の電源も落とした。
峰岸、変に思ったよね……。
たかが悪夢ひとつでなにをやっているのだろう。