愛のない部屋
「任せたって、おまえなぁ」
「どうせ俺、邪魔でしょ?そこまで空気の読めない男になりたくねぇよ」
"ねっ?"なんて篠崎さんに同意を求められて、首を傾げる。
2人の会話から私を心配して訪ねて来てくれたことは分かった。また迷惑を……。
「降ろしてくんないと、怒るよ」
篠崎には珍しい本気の言葉。そこに感情は含まれていないようで冷たい。
「……分かったよ」
ため息をついて峰岸は道の端に車を止めた。
「沙奈ちゃん、おやすみ」
ニコリと笑い、篠崎はさっさと扉を開けた。
「篠崎さん……、」
「明日また会社でな」
爽やかな笑顔を浮かべ、篠崎は車を降りてしまった。私と峰岸を残して……。
「道、案内しろよ」
命令口調の峰岸がやっと私を見た。
「家に上がられるの嫌だったら、うちに来ても良い」
「……どうして来てくれたの?あの電話は、寝ぼけてて…………」
言い訳を並べるが、上手く言葉が続かない。