愛のない部屋

コンビニへは細い裏道を通ったが車では入れない道で大分、遠回りになった。



「ここか」


「はい。そこのマンションです」


「じゃ、そこの駐車場に止めるか」



駐車場に車を入れる時、バックを確認するために振り返った峰岸と目が合う。


「うん」

「え?」



ひとり納得したように頷いた峰岸。


「やっぱ篠崎には捕られたくないな、って思った」


「なにを?」


「おまえを」


「……」


「さぁ、降りて」


「う、うん」



急かされて車から降りれば、生ぬるい風が吹く。



「冬だけどまだまだ暖かいな」



「うん……」



少し前に妙な発言をしたばかりなのに、峰岸はいたって自然な態度。


「何分待たせる?」


「なにがですか?」


「女の部屋に上がる時、しばらくドアの前で待たされるじゃんか」


そんなの知らない。
他の女の子と比較して、私を見ていることが腹ただしい。


「マリコさんはアンタを待たせるんだ」


バカみたい。


なんで雰囲気を崩壊させるような発言を自ら口走ってしまうのだろう。
可愛くない女。

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