愛のない部屋

「寝ぼけていたみたい。今日は色々あったせいで頭が混乱してたから、おかしな発言しちゃったのかな」


「はぁ?俺はわざわざ駆け付けたのに」


「ごめん。いらない心配を掛けたね。来てくれなくて大丈夫……」


言葉の途中にも関わらず、峰岸の掌で口元を覆われた。


「なにも聞きたくない。おまえの口から聞きたいのは、俺が好きだと言う台詞だけ」


峰岸の手の温もりが伝わってきた。
私が求めている不安を掻き消す魔法の手。



「マリコとは別れる。ちゃんとアイツを説得して、おまえを貰う」


「なに勝手なこ……ん、」


視界が暗くなったと思えば峰岸の顔が近くに迫りーー床に押し倒されていた。


「もうなにも言わせない」


簡単にキスできてしまう至近距離。


「なにを言われても、俺はおまえを諦められない」


吐息がかかる。

くすぐったくて顔を反らせば、頬を両手で挟まれた。



「キスは我慢しておく。ありがたく思え」


「……」


「その変わり、ツケは後で払ってもらう」


「……」


「おまえの唇が真っ赤に腫れるまで、むさぼるから」



――恥ずかしい。
けれど、嬉しい。


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