愛のない部屋
恥ずかしい台詞を、こんな近くで……
「とりあえず帰ろう」
「私の居場所は、此処だよ」
せっかく借りたマンションを手放す気にはなれない。
「なに言ってるの。最初に戻るだけだろう」
「最初?」
グイグイ力を入れて峰岸を押し退けようとしても動く気配はない。
それどころさ腕が背中に回り、床の上で抱き合う形となる。
「愛のない部屋に、戻るだけ」
「……なにそれ」
「住み始めた頃みたいにさ、お互い干渉せずに好き勝手やろうぜ」
峰岸を空気として扱っていた最初に戻ることなんて、できると思う?
傍にいるだけで意識してしまうのに。
「俺のこと好きじゃないんだし、別に平気だろう?……俺はしばらくはマリコを優先する。だからおまえには触らないし、余計な干渉もしないよ」
「……」
「苦しいのは"俺だけ"でしょ?」
私だって苦しいよ。
また息がつまる生活に戻ることよりも、
伝えてはいけない想いを抱えながら、峰岸と一緒に住むなんて苦しすぎる。
「だからもう少しだけ充電させて。おまえの体温を感じている間は、すごく幸せなんだ」