愛のない部屋
本気で嫌がれば、峰岸は離れてくれると思うのに。拒めないのは私自身も峰岸を求めている。
切ないね。
「この間は無理矢理、キスしようとしてごめん。もう二度と寝込みを襲ったりしないから戻って来て?心配なんだよ、一人暮らしなんて」
「二度あることは、三度あるって言うじゃない」
三度目がもしあったとしたら、私は――拒めるのだろうか。
「……あったとしても、それはマリコと別れた後だ」
「結局マリコさんのことを惚れ直すのが、オチじゃない?」
笑えない結末。
そうなることが無いとも言い切れないから、"待ってる"なんて約束はしない。
峰岸の心がマリコさんへ動いた時、その約束は邪魔になってしまうから。峰岸を縛るようなことはしたくない。
「おまえ良い香りがする。この部屋に入る前は、忍耐強く我慢する予定だったけど。もう限界に近いわ」
「……なにが?」
「理性が」
「……」
「ここで理性を失ったらヤバいから、そろそろ帰る」
「そうして」
名残惜しい。
帰らないで、って言えたら良いのに。