愛のない部屋
視線だけで相手を怯ませてしまうような、鋭い目。マリコさんは確かに綺麗だが冷たい印象も受けた。
私の格好といえばTシャツとジーンズ。
清楚な格好の彼女とは大違いだ。
ああ、失敗した。
「はじめまして。居候の宮瀬沙奈です」
"居候"を強調すればマリコさんの顔は歪む。
「居候って?」
「私、行く宛なくて。峰岸さんにお世話になってるんです」
峰岸に敬称を付けてみたけれど、なんだかしっくり来ないな。別の人の名前を読んでいるみたい。
「ただの居候なの?」
峰岸が答えを求められているのに、彼は何も言わない。だから代わりに私が質問を受ける。
「もしかして峰岸さんの彼女さんですかね?いつも話しに聞いてますよ」
「……ええ、彼女です」
自信満々で言われたのならば、腹が立ったかもしれないがその言葉には迷いが見えた。
本当に峰岸の彼女なのか、マリコさん自身が不安なのだろう。
「お似合いですよ。私の入る余地なんてないと思いますが、本当に居候させて貰っているだけなので。やましいことなんて、なにもありませんよ」
私はいつから女優になったのだろう。
死を望む女性の前でなら、どんな優しい嘘もつける気がした。