愛のない部屋
不倫…なんて…絶対ダメだよね?
寝ても起きてもぐるぐると脳内を駆け巡る2文字に頭を抱える。
「おはよーさん」
俯き加減でエレベーターを待っていると、隣りに篠崎が立った。
その横には綺麗な女性。
私と目が合うと微笑み、頭を下げてくれた。
「おはようございます」
「なんか暗いねぇ?」
いつもと変わらない篠崎に助けられる。
「輝が無駄にテンション高いだけじゃない」
彼女は、ねぇ?なんて私に同意を求めて来たので曖昧に頷いておく。
カールした睫毛は可愛く、その瞳がキラキラと輝いている。
「君だってさっきまで楽しそうに、笑ってたじゃないか」
「だって輝が私の誘いを断るんだもの。テンションも下がるわよ」
拗ねたように反論する篠崎に口を尖らせて彼女は笑う。
そんな美男美女と共に到着したエレベーターに乗り込む。
「で、いつなら輝は都合が付くの?」
「さぁ…俺も多忙だから」
「どうせ綺麗な子と遊び歩いてるんでしょう?」
「君より綺麗な女性がいたら、お目にかかってみたいね」
私の存在など気に掛けてもいないやり取りに呆れながら、傍観していた。