愛のない部屋
悪い予想は見事に的中。
こんな時、どうするんだっけ?
何度も頭で描いたじゃないか。
その通りにやれば良い。
「沙奈?」
心配そうにこちらを伺うタキに、笑い掛けた。
「大丈夫。私はもうタキ無しでもやっていけるよ」
「ホントか?」
「もちろん」
作り笑いはたぶん成功。
後は涙を見せなければ良いだけ。
「タキ、幸せになって」
本心だ。
私の分まで、幸せに。
「……ごめんな?」
何故、タキが謝るのだろう。
「おまえの側にずっと居るって約束した」
「そうだね」
「離れていたら、側に居ることにはならねぇか?確かにすぐに駆け付けられる距離じゃねぇかもしれないけどさ。おまえになんかあった時には、死ぬ気で助けてやるから」
「もう、いいよ」
真剣な目で、薄い唇で伝えられた言葉は、
私に向けるべきものじゃない。
「死ぬ気で助けるとか、守るとか。もう言わないで。言うべき人が違うよ?タキはお嫁さんのことを、一生守るんだよ」
私のためとか、そんな言葉はいらない。
タキはタキの人生を、守って欲しい。