愛のない部屋
家族連れで賑やかな店内はなぜか落ち着いた。幸せな家庭もきちんとあるのだと証明されているように思えたからかな。
「いや、また来ればいい」
タキはきっぱりと言い切った。
それがまた嬉しかった。
「沙奈と知り合えた大切な場所で、また色々と話をしよう。俺は幸せな家庭をつくるよ。子供にも寂しい想いはさせない」
「うん」
もうしばらくしたらタキは遠い人になってしまうかもしれない。
そう自覚することは辛すぎて。
それでもタキの前で涙を堪えた己を褒めてやりたい。
ファミレスからの帰り道、送ってくれるというタキの申し出を断って、
泣きながら帰宅した。
弱虫な私は強くなれないようだ。
永遠のサヨナラなんかじゃないと分かっているのに、心は悲鳴を上げる。
私の日常でタキは大きな柱となって支えてくれていた。
その支えがなくなろうとしている今、私はまっすぐ歩けるのだろうか。