愛のない部屋

「おい、」


部屋のドアをノックする乱暴な音がして、目を開ける。

手元にある目覚まし時計を確認すると、もう朝になっていた。


仕事に行かなきゃ、といういつもの言葉は出て来ない。



休みたい、休んでしまおうか。

そんな情けない言葉が脳を占める。



「遅刻するぞ!」


隣りの部屋で朝から大声を張り上げている峰岸に申し訳ないと思いながらも、寝たフリをすることに決めた。


「おい!」


ドアを叩く音が更に乱暴になる。


「いい加減にしろよ!おまえは社会人だろうが!」


「……」


「滝沢さんのこと、会社を休む理由にすんなよ!」


ああ、バレているようだ。


昨日。
家に帰り、すぐにベッドにダイブ。

それからずっと部屋に閉じこもっていた。



寝れるはずもなくあれこれ思案して、
気付いたら朝だった。



「おまえがウダウダやってて、一番気にするのは滝沢さんだろう?」



タキは私が会社を休んだと知ったら心配するに決まっている。

休んだ理由がタキ自身だということを、容易に想像してしまうだろう。



「5分待って!」



ドア越しに怒鳴り返す。



「早くしろよ」



ほっとしたような峰岸の声が返ってきた。

また借りを作ったのかな?
ありがとう。

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