愛のない部屋
「事情を知っていた俺が真っ先にマリコに会って話を聞いた。彼女の口からは峰岸とやり直したいという言葉が出てきてさ。でも再会することは契約違反だから、俺はなんとかマリコを帰らせた」
「そんなことが……」
「それから俺は何故かマリコの相談相手にさせられてね。まぁ付き合いの良い俺は、なにかと彼女に助言してきた。峰岸とはもう二度と会わない方が良いという忠告も含めてね」
マリコさんと篠崎さんには交流があった。
峰岸に出て行け、と言われたあの夜。
篠崎さんは先回りして、私に逃げ道を作ってくれた。
きっと篠崎にはマリコさんと峰岸の動きが見えていたせいなのだろう。
「不倫の話はもう過去のことだし。峰岸を本気で愛すマリコの力になりたいと、俺の心境に変化が生じた。だからマリコからの手紙も渡したしな」
手紙……すっかり忘れていたが、
私がマリコさんのことを知るきっかけとなった重要な出来事だった。
「あの手紙には、マリコが峰岸とやり直すために旦那と別れたことが綴られていたんだよ」
マリコさんの決意が書かれたラブレターを、私が峰岸に渡すことになったなんて
篠崎は少し意地悪だ。