愛のない部屋
嫌いだ、峰岸なんて嫌いだよ。
いくら気が合わない私たちでも、
タキに幸せになって貰いたいという想いは一緒だと思っていたのに。
とんだ勘違いをしていたようだ。
「ごめん……」
重い重い沈黙を破ったのは、峰岸の方だった。
峰岸が先に折れてくれたのだから、私も謝れば済む問題なのに。
ごめんなさいの一言が口から出てくれない。
勢いよく叩いた頬は赤くなっていて、
同じくらい私の手も赤みを帯びた。
「俺は過去の恋愛に後悔してる」
「……」
「やり直しが利かない人生の中で、今やらなくちゃ駄目なことって沢山あるよな?おまえが滝沢さんに今、するべきことはなんだろうな?」
「勝手なこと言わないで」
峰岸の過去のことなんて私には関係ない。
「あんたの後悔した恋を、私とタキのことと一緒にしないで。私はタキに恋をしていない!って何回も言っているでしょう?」
「じゃぁ、なんで。会社にも行きたくなくなるくらい、滝沢さんのことで苦しんでるんだよ?」
苦しんでる?
「私、苦しそう?」
「ああ。自分では気付いてなくても、好きなんじゃねえの?だからショックを受けたと、俺は思ってた」