愛のない部屋

苦しい?
それはタキが好きだから?



「怖いの。独りになることが……」


愛しているから、遠くに行って欲しいんじゃない。

タキが居てくれたから今まで頑張れた。
いきなり置いてきぼりくらう気持ちは、どんな言葉を選んでも峰岸には伝わらないだろう。



「アンタにはタキ以外に、大切な友達がいる?」


「…ああ」


「私には誰もいないの。タキだけが唯一、信頼できた人。家族も友達もみんな切り捨てて生きてきたの」



全てを理解して欲しいとは思わない。

ただほんの少しだけでも、ひとりで生きてきた私の孤独が伝わればいい……。



「ひとりとか言うなよ。少なくとも、俺がいる」


「……」



――"俺がいる"


濁りのない瞳で、告げられた言葉は力強かった。



「寂しいなら、俺を頼れ。滝沢さんの代わりにはなれないかもしれないけど、力にはなるから」


「なんでアンタが?」



「滝沢さんがおまえを俺の家に寄越したのは、そういうことだろう?」


「え?」


「滝沢さんはおまえがこうなることを予期して、俺たちを引き合わせたのだとしたら。俺にできることはしなくちゃさ、期待ハズレになっちゃうだろ?」

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