愛のない部屋

邪魔者がいなくなるというのに、峰岸はちっとも嬉しそうな顔をしない。

それどころか不機嫌?



「俺たち、なにやってたんだろうな」


「え?」


「少なくとも滝沢さんの思うようには、ならなかった」



この家に案内されてから私たちは
"恋人ごっこ"をしていた?


ううん。


甘い言葉なんて1度も出ずに、皮肉の込められた台詞ばかりだった。


「人を好きになることって、そんなに簡単なことじゃないと思う」


「そうだよな」



例えタキの命令だとしても私は誰も愛せない。

恋という感情を呼び起こす術を知らないのだから。


よくある一目惚れや、

出逢った瞬間に運命を感じた

という話は、


―――嫌いだ。




一目惚れした、
って偉そうに言うけどさ。



それは相手の外見が、自分の好みと一致しただけでしょう?




運命を感じた、
と自慢気に言うけどさ。



運命ってなに?



出逢うことが決まってたの?



それなら2人が結ばれることは神様が決めたことで

アンタたちに選択肢のない可哀想な恋じゃない?




こんなひねくれた女を本気で愛してくれる人なんていない、ってこと。

私が一番よく知ってるよ。

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