愛のない部屋
誰が私に興味を持ってるって?そんなもの好きがいたらお会いしてみたいものです。
「知らなかったろう?」
「知らないも何もアンタみたいに告白とかされたことないし」
「おまえが誘いに乗らないから、告白まで行き着かないんだろうが」
確かに入社当時は海に行こうだとか、舞台を見に行かないとか、そんな休日のお誘いは何度もされた。
でも会社の人と外でわざわざ会う理由が見つからないから、悪気もなく全て断ってきた。いつの間にか業務以外のことで話し掛けられることもなくなり、今は落ち着いている。
「とにかく篠崎からおまえの話を聞いて、なんとなく興味を持ったんだ。おまえが飲み会とかに来ないから、関わる機会はなかったけどな」
「会社の人とお酒を飲んでなにが楽しいのか、理解できないもん」
「滝沢さんからもおまえの話を聞かされた時は、さすがにビックリした」
世の中は狭いもんだ。
「篠崎が評価して、滝沢さんが可愛がる女の子。おまえだから、下宿させてやったんだよ」
女の子、なんてくすぐったい響き。
「おまえがうちに居る理由はないかもしれないが、反対に出て行く必要もないだろう?」
「でも……」
他人の好意に甘えることに慣れていない。見返りを求める人間が多すぎて、誰かを頼ることが怖くなっていた。