愛のない部屋
「告白されて断ることも心苦しくてさ」
「あ、そっ」
せっかく可愛い女の子が告白してくれても、心を動かされることなく迷惑だと思っているパターンか。
タキもモテる男は辛いと言ってたっけ。
「それでタキは?後から来る?」
「ああ、なんか会社に戻ったらトラブルが起きてたらしくて。今日は残業だって。だから代わりに俺を寄越した」
「そっか」
タキが私になにを伝えようとしていたのか予想はつかないが、先延ばしになってしまったなら仕方ない。
そもそも話すことなんて最初からなかったのかな。私の気のせい?それならいいんだけど…。
「俺、腹減った」
「私も」
なんか頼もう、と峰岸はメニューを広げた。
タキが仲介してくれなければ
2人きりで食事をする機会もなかっただろう。
私と峰岸の恋のキューピットはタキなのだと、
後々気付いた。
その頃には既に峰岸のトリコになっていたというのに、
一度恋をしないと決めつけた私たちの恋路は、
曲がりくねっているどころか、交差すらしてなかったのだ。