愛のない部屋

冷たい風が吹く。
寒い冬はもうそこだ。


「お荷物になるのと、同情されることだけは嫌なの」


「……違うだろ?」



峰岸はくるりと身を翻し、私を見下ろした。



「俺に言いたいことは、そんなことじゃないだろう」



少し切れ長の目が私を捕らえる。全てを見透かされているような感覚に陥り、居心地が悪い。




「傍にいて欲しい、って言えよ」



否定の言葉は出ず、思わず下を向いた。



「寂しいなら寂しいと口に出せば?同情されることも嫌だけど、独りになる方がもっと辛いんじゃないの?」



顎にひんやりとした手が触れた瞬間、上を向かされた。


ただそれだけのことなのに免疫のない私は動揺し、されるがままになる。


大きな手は私の頭へと移動し、そっと撫でられても抵抗はできなかった。



「心配すんな、独りにしないから。おまえから消えない限り、俺はずっと近くにいる」



「……」



――傍にいる、

口先だけの約束は、何の保証もされてないのに。



なぜか信じられる。
そう思ってしまった。



「大丈夫。滝沢さんがいなくても、俺がいるんだから」


優しい言葉。
壊れ物を扱うように、私は峰岸の胸へと誘導された。

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