愛のない部屋
嫉妬心を追っ払い、先を続ける。
「タキと峰岸って、どういう知り合いなの?」
『知りたいの?』
少し嫌そうな声色。
「タキが話せる範囲で、大丈夫だから」
すぐに付け加える。
必要以上の詮索はしないという暗黙のルールを、破るつもりはないのだけれど。これも聞いてはいけないことだったのだろうか?
「タキ?」
『……』
いつも流れるように進む会話が止まる。
やっぱいい、
そう言おうとした時、
『仕事関係でかな』
そうタキは言った。
「仕事関係か…」
職場の名前、いやその前にタキが会社員なのかさえ明らかになっていない。
『峰岸からは、まだ何も聞いてない?本当はあの日、峰岸に代わりにファミレスに行ってもらった日に話そうと思ったんだけど』
「なに?聞いてないよ」
『いつか話してくれると良いなっ』
「タキと峰岸の出逢いを?そんなに素敵な出逢いなわけ?もったいつけて」
冗談を飛ばす。
タキが敢えて話さないことを峰岸の口から聞く時は来ないと、分かっていた。