愛のない部屋
「…私のこと覚えていないの?」
信じられない、そんな口ぶりで言われても。
「食堂でお話しました」
「なにをですか?」
食堂?話したっけ?
「……峰岸さん、のことで」
峰岸……?
また峰岸の話題ですか。
変な噂を立てられたり、ホントに迷惑……、、
「あ、」
「思い出しましたか?」
ニッコリ満面のの笑みを浮かべた彼女のそれは、作り物だとすぐに分かる。計算された笑顔になんの価値があるのだろうか。
「噂を聞いて峰岸と私のこと、詮索しに来た人でしたね」
「詮索なんて、人聞きが悪いですわ」
私の嫌味にも笑みを張り付けて応対する彼女は、たぶん大人だ。
反対に私は残り少ない昼休みを、邪魔されたことへの怒りを素直に口に出すくらい子供。
「用があるなら、早くしてくれませんか?」
峰岸に一方的に想いを寄せるこの女は、どうして恋にここまで真剣になれるのだろう。ひとりの男にそこまで執着できる理由が知りたい。