Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
全力で100メートル走でもしたかのように、心臓の鼓動が速い。
いつまでたってもさっきの香水の香りが鼻の奥からなくならない。
もっと――もっとあの香りに包まれていたかった、などと考えている自分に気づいて、慌てて否定した。

「とりあえず、これで楽しく盆休みが過ごせるな」

さっきまでとは打って変わって、みんな表情が明るい。
これが一番の、懸念材料だったからね。

「バーベキューの肉は頑張ったご褒美に奮発してやる!
松阪牛でも飛騨牛でも、好きな肉を買ってこい!」

「マジですか!?」

橋川くんに喜びは半端ない。
いいなー、私も行きたかったなー。

SMOOTHの夏期休業はお盆のある週まるまる一週間。
経営戦略部ではその最初の土日に一泊二日で海水浴に行くのが、恒例になっているんだって。
私は当然、父――というよりも春熙の許可が出なくて、不参加だけど。

「愛乃はやっぱり無理そうか」

「はい、残念ながら」
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