Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
私が仕方なく笑うと、高鷹部長は軽く握った手を口もとに当ててなにか考え出した。

「一番の功労者がご褒美なしだなんて可哀想なこと、できないからな。
よし、任せておけ」

にやっと右頬だけを歪ませて笑った高鷹部長は、完全にいたずらっ子の顔をしていた。


今日の帰りは父と一緒だった。
春熙は外せない接待があるらしい。

「久しぶりに食事でもして帰るか」

「はい」

車に乗ると同時に父が提案してきた。
別に父とふたりで食事がしたわけじゃないが、そこは乗っておく。
だって、家で母も交えて三人で食事は、父とふたりよりも息が詰まる。

父が車を回させたのは珍しく、すき焼きの店だった。
いつも大抵連れていかれるのは、寿司屋か料亭なのに。
ちなみに生魚が苦手な私は、どちらに連れていかれるのもあまり好きじゃない。
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