Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「愛乃さん、なに飲む?」

――ピクッ。

誰かが私を呼ぶたび、笑顔のまま春熙の口もとが引きつる。

「……はるくん」

ちょいちょいと私が袖を引くと、春熙は笑顔を保ったまま私を見下ろした。

「お父様と同じ香芝だからややこしいでしょ?
だからここではみんな私を、名前で呼ぶの。
私がそれでいいって思ってるんだから、問題ないよね?」

「愛乃がそれでいいならいいよ」

しょうがないね、とでもいうかのように春熙が笑う。
うん、これくらいは許してほしい。

「それに誰かみたいに、呼び捨てじゃないし」

ちらっと春熙が視線を向けた先には高鷹部長がいる。
あちらも気づいたみたいでこっちを見てきた。

「いい機会だからお義父さんの他に愛乃を呼び捨てにしていいのは僕だけだって、よく理解してもらわないとね」
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