Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「なにって、春熙と結婚するのかって聞かれただけだよ。
ほら、寿退社するだろうし、上司としては知っとかないといけないでしょ?」

「ほんとにそれだけ?」

私の上からじっと、春熙が見つめてくる。
なにも映さない、硝子玉の瞳。
暗い暗い、底の見えない真っ黒なその奥。

「それだけ、だよ」

つい目を、逸らしていた。
一方的だったとはいえ、唇を重ねたなどと言えようはずがない。

「……嘘つき」

パーカーを脱ぎ捨て、春熙の手がパレオの結び目をほどいていく。

「愛乃の嘘なんてすぐにわかる」

首の裏に手を差し入れられ、ホルターネックの紐がほどかれた。

「僕に嘘はつかないでと言ったはずだよね」

胸を押さえようとした手は、ベッドへと縫い止められる。
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