Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
春熙の顔を掴み、自分から唇を重ねる。
きっと、それだけじゃ許してもらえない。
唇を舐めると、からかうかのようにすぐに開いた。
ぬるりと春熙の中へと侵入し、ぎこちないまでも彼を求める。
最初は私をおちょくって遊んでいた癖にすぐに彼の手が私の後ろあたまに回り、髪を乱した。

「……少しはわかってきたみたいだね」

唇が離れ、春熙が満足げに笑う。
私にはもう、こうやって生きていくしかないのだと絶望した瞬間だった。


夕食もやはり、坂巻さんが運んできて準備してくれた。

「愛乃、食べないの?」

「その、食欲なくて」

準備された上品なミラノ風カツレツも、ビシソワーズもサラダも、なんだか精彩を欠いて見えた。
それに春熙を前にすると、みるみる食欲が落ちていく。

「……下げろ」

「は?」
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