Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
よく聞き取れなかったのか坂巻さんが尋ね返した瞬間、グラスが飛んでガシャンと割れた。

「下げろって言ってるんだ!
愛乃の食欲が出ないようなものを出すな!
これを作った奴はクビだ!」

「かしこまりました」

「た、食べるから!」

慌ててフォークを握り、サラダを口に運ぶ。

これくらいで怒って、料理人を簡単にクビにする春熙が怖い。
それになんの疑問も持たず、承知する坂巻さんが怖い。

「無理して食べなくていいんだよ?
愛乃が食べたいものを作らせるから」

心配そうに春熙が聞いてくるが、その愛情は酷く重くて潰れそうだ。

「なんかお腹、空いてきたから。
作ってくれるの待ってられないし。
それにこのカツレツ、おいしいよ?」

カツレツを口に入れ、にこにこと笑ってみせる。
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