Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
私を膝の上にのせ、いつものように熊のぬいぐるみみたいに抱いて春熙は愉しそうに話し続ける。

「警察から解放してもらった礼でも言いに来たのかと思ったら、愛乃を返してくれなんて言うんだよ?
愛乃は最初から、僕だけのものだっていうのに」

春熙の手に力が入り、本当に怒っているのだとうかがわせた。

「でもさ、あの傲慢な男が、カーペットにあのきれいな顔を擦りつけて僕に懇願するの。
見物だったなー」

くっくっと喉を鳴らし、愉快でたまらないとでもいうのか春熙が笑う。

征史さんにそんなことをさせている自分自身が情けなくなる。
私にそんな価値はない。
征史さんにはもう、私を忘れてほしい。

「そうだ、結婚式には彼も招待しよう。
愛乃が僕に永遠の愛を誓うのを彼に見せつけて、――絶望させてやる」

やめて、そう言いたいのに声が出ない。
それほどまでに――笑い続ける春熙が、恐ろしかったから。
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