Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「足袋だけじゃないか!
怪我はしてないか?」

「とりあえずここ、座って」

「なにか飲む?
あ、俺、自販機でお茶買ってきます!」

矢継ぎ早にいろいろ聞かれ、答えることができない。

「……愛乃」

ドアの方から聞こえた声で、あたりは一瞬にして静かになった。
立っていた男はつかつかと私の方まで一気に距離を詰め、目の前にひざまずいた。

「本当に愛乃、なのか」

目にいっぱい涙を溜めた彼の手が、そっと私の頬に触れる。

「はい、まさくん」

その手に私の手を重ね、甘えるように頬をすりつけた。

「愛乃……」

細められた目からぽろりと涙が転がり落ちる。
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