Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
春熙が向かったのは、近くの料亭だった。

「お茶漬けでいい?」

おしぼりで手を拭きながら、春熙は私の顔をのぞき込んだ。

「うん」

だいたい、歓迎会で準備されていた料理は軽くつまめるものが多くて少し食べ足りなかったから、帰ったら永沼さんになにか作ってもらおうと思っていたくらいだし。

「了解」

すぐに春熙は仲居を呼んで、注文をはじめた。
料理が出てくるまで、つきだしの海老と枝豆のゼリー寄せをつつく。

「経営戦略部の人たちは愛乃に優しくしてくれる?」

「みんな優しいよ」

春熙の言う優しいと、私が思っている優しいは違うって知っている。
彼が求めているのは杉原課長のように私に接することだ。
あそこでの私の扱いを知ったら、……春熙はどうするのだろう。

「高鷹部長に怒鳴られたりしてない?」
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